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シルバの正体⑦
「葛西さん?俺達のこと、怖くないんですか?
気持ち悪くないんですか?」
「え?どうしてですか?
須崎さんは須崎さん。
シルバは、耳出てるけどシルバ。
そうでしょ?」
「…あなた、不思議な人ですね…」
呆れたように言われて、なぜかちょっとムッとした。
「ママ…僕、ママと一緒にいたい…」
「銀波、葛西さんはお前のママじゃない。何度言ったらわかるんだ?
葛西さんは動けない子犬をかわいそうに思って拾ってくれて、優しく介抱してくれたんだ。
ここは葛西さんのお家でお前の家ではない。
葛西さんには葛西さんの生活があって、他人のお前は関係ないんだ。
わかるな?」
「…だって…だって…」
「ママがいなくて寂しいのはわかる。
でも、他人様に迷惑をかけてはいけないんだよ。
銀波、いいね?
さぁ、きちんとお礼を言って。」
諭すように言われて、見る間にシルバの目にまた涙が溢れてきた。
それでも健気にこくんと頷くと
「僕を助けてくれて、ありがとうございました。」
と、ぺこりと頭を下げた。
「本当にありがとうございました。後日、改めてお礼に伺います。
あの…このことは…」
「ご心配なく。誰にも言いませんから。」
「…すみません。ありがとうございます。
では、今日はこれで…失礼します。」
シルバは、俯いて俺の方を見ようともしない。
何度も何度も頭を下げ荷物を引っさげて、須崎さんとシルバが帰って行った。
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