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シルバの正体⑧
玄関の鍵を閉めて、がっくりと力が抜けた。
今までのことは夢だったのかな…?
人狼?
子犬が子供?
シルバが銀波 で人狼の子供?
大好きな作家の須崎 黒曜がさっきまで目の前にいて、人狼だって?
なんだか…頭がいっぱいいっぱいだ…
テーブルには、お客様用の茶器とオレンジジュースがたっぷり入ったコップ。
間違いない、さっきまでいたんだ。
初めて会った…人狼。
本当にいたんだ…
そういえば、やけに人の言うことをよく聞く利口な子犬だと思ってたんだよな。
俺のことを『ママ』って…
俺は男だからママにはなれないよ。
ってか、須崎さんと付き合うなんてないから!
頭を がしがしと掻いて、ふうっとため息をついた。
ありえないことが目の前で起こって混乱している。
銀色のもふもふの毛並みを堪能して、転げ回って遊んで。
きゅうきゅうかわいい声で鳴いて擦り寄ってくるシルバに癒されて。
あぁ…楽しかったなぁ…
でも、あの子は人狼の子供だったんだ…
どれだけ考えても冷静になれない。
人狼であることを隠して生活してきた って、物凄くたいへんなことなんじゃないのか?
ましてや須崎さんは有名人じゃないか。
シルバの学校とか、今からどうするんだろう。
まさかずっとあのままの姿?
あー、もう、考えるの止めた!
風呂だ!風呂に入ってリフレッシュしよう!
俺はスーツを脱ぎ捨てて脱衣所へ向かった。
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