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再会⑥
「ママじゃないんだけど…
さぁ、熱々のうちに食べましょう!話は後で。
ほら、シルバ!手を洗っておいで。
須崎さん、洗面所はあっちです。あなたも手を洗って。」
上から目線で指示を出すと、須崎さんは
「ありがとう…」
と、シルバと二人素直に洗面所へ行った。
「「「いただきます!!!」」」
二人は、美味い、美味しい、を連発しあっという間に皿が空になった。
こんなに喜んで食べてもらえるのは…うれしいもんだな。
ハッと気が付いたように須崎さんは正座して
「重ね重ね、あなたにはご迷惑を掛け続けて…
銀波だけじゃなく、俺まで…
何てお詫びとお礼を言えばいいのか…
本当に申し訳ありませんっ」
と、頭を擦り付けんばかりに土下座した。
それを見たシルバも正座して、同じように頭を下げた。
俺は慌てて
「止めて下さい!頭を上げて!
誰か困ってたら助けるでしょ?
当たり前のことだから…そういう風に言われると、俺…困る…」
須崎さんはゆっくり身体を起こして、じっと俺を見つめた。
「あなたの仰る『当たり前』が通らない世の中なんです。
あなたみたいに無条件で他人を助ける人なんて、俺は出会ったことがない…
この子の母親は…俺の妹です。
身内バカと思われるかもしれませんが、あなたのように明るくて純粋で優しい娘 でした。
だから、銀波はあなたと妹を重ね合わせて『ママ』と呼び、これほどまでに慕うのでしょう。
正確に言うと、俺達は親子ではなく叔父と甥。
未婚で銀波を生んだ妹が病死してから、俺がこの子を引き取りました。」
俺は黙って耳を傾けていた。
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