20 / 337

再会⑦

「狼の姿になったところを見られ…殺されそうになって俺のところへ逃げてきて…その時にはもう銀波を身籠っていました。 銀波が一才の時に心筋梗塞で倒れて…そのまま… 子育ての経験もない男に育てられて…俺自身も手探りで苦労しましたが、銀波も大変だったと思います。 あの日、久し振りに外出したんです。 やっと原稿が上がって気持ちも落ち着いて。 滅多にない外出にハイテンションになったんでしょう、一瞬目を離した隙に、銀波がいなくなりました。 匂いを辿って探し回りました。 最終的に辿り着いたあの道を…あの近くを何度も何度も。 でも、そこからかき消すように匂いがなくなってしまって… 警察に届けようもなく、自分で探すしかなくて。 少しでも銀波の匂いが残っていないか…飲まず食わずで探してたんです。 そうしたら、あなたの懐に包まれたうれしそうな銀波を見つけて。 あなたを見た瞬間『この人は信じていい人だ』と思いました。 未だ嘗て、こんな思いを持ったことはなかった。 そして…その思いは間違っていなかった。 ここから連れて帰った銀波の落ち込みようは半端でなかった。 人型を取ることもできず、ずっと獣のままで。 夜もあなたを恋しがって泣くんです。 頭にきた俺は、鍵のかかる部屋へこの子を閉じ込めました。 しばらく頭を冷やせと。 けれどそれは逆効果で、またまたあなたに面倒を掛ける羽目になってしまいました。 銀波の行き先は、あなたのところしかないと確信していたので、仕事中とは知りながら連絡してしまったんです。 本当に申し訳ありません…」 長身を縮こまらせて、須崎さんがひたすら謝ってくる。 シルバを見やると、膝の上の握り拳にポタポタと涙が落ちていた。

ともだちにシェアしよう!