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再会⑦
「狼の姿になったところを見られ…殺されそうになって俺のところへ逃げてきて…その時にはもう銀波を身籠っていました。
銀波が一才の時に心筋梗塞で倒れて…そのまま…
子育ての経験もない男に育てられて…俺自身も手探りで苦労しましたが、銀波も大変だったと思います。
あの日、久し振りに外出したんです。
やっと原稿が上がって気持ちも落ち着いて。
滅多にない外出にハイテンションになったんでしょう、一瞬目を離した隙に、銀波がいなくなりました。
匂いを辿って探し回りました。
最終的に辿り着いたあの道を…あの近くを何度も何度も。
でも、そこからかき消すように匂いがなくなってしまって…
警察に届けようもなく、自分で探すしかなくて。
少しでも銀波の匂いが残っていないか…飲まず食わずで探してたんです。
そうしたら、あなたの懐に包まれたうれしそうな銀波を見つけて。
あなたを見た瞬間『この人は信じていい人だ』と思いました。
未だ嘗て、こんな思いを持ったことはなかった。
そして…その思いは間違っていなかった。
ここから連れて帰った銀波の落ち込みようは半端でなかった。
人型を取ることもできず、ずっと獣のままで。
夜もあなたを恋しがって泣くんです。
頭にきた俺は、鍵のかかる部屋へこの子を閉じ込めました。
しばらく頭を冷やせと。
けれどそれは逆効果で、またまたあなたに面倒を掛ける羽目になってしまいました。
銀波の行き先は、あなたのところしかないと確信していたので、仕事中とは知りながら連絡してしまったんです。
本当に申し訳ありません…」
長身を縮こまらせて、須崎さんがひたすら謝ってくる。
シルバを見やると、膝の上の握り拳にポタポタと涙が落ちていた。
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