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再会⑧
俺は、声も出さずに涙を零すシルバに近付いた。
そして、よいしょ と抱っこすると
「子供は喜怒哀楽の感情を素直に出したらいいんだ。
泣きたければ声を出して泣けばいい。
甘えたければ甘えたらいい。
そうやって大人になっていくんだよ。
須崎さん?」
「はい?」
「たった一人で子育ても仕事も家事も、頑張ってたんですね。
…あなたも…感情を解放してもいんですよ。」
びっくりしたように大きな目を瞬かせたシルバを抱いたまま、すっと左手を伸ばして、須崎さんの頭を優しく撫でた。
何度も、何度も。
どうしてそんなことをしたのか、わからないが、無性に、そう、したくなった。
目の前にいる立派な大人の男性が、愛おしく思えて…
俺はノンケだったはず。
でも、でも…
ふわりと黒い塊が覆い被さってきた。
シルバを抱っこしていた俺は、そのままシルバごと抱きしめられ、息が止まりそうになった。
そのうち、その肩が震え出したのに気が付いた。
耳元に小さな嗚咽の声が響く。
あぁ…この人も辛かったんだ。
大切な妹を見送り、残った小さな命を必死で育て、慣れぬ人間社会に揉まれて…
頑張ったね。もう、我慢しなくてもいいよ。
大声で泣くシルバと、静かに泣いている須崎さんを抱いて、俺はなぜか聖母マリア様にでもなったような慈愛に満ちた心地になっていた。
そして…
この目の前で声もなく泣いている男 が、愛おしくて堪らなくて、胸が一杯になって俺まで泣きそうになった。
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