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淡い恋の芽生え②

翌朝、ご機嫌で浮かれて尻尾を振っている銀波を座らせ、真面目な顔で見据えた。 「銀波、俺が今から言うことをよく聞いて、理解してくれるか?」 「うん!わかった!」 尻尾の動きが止まった。聡いな、この子は。 「葛西君のことだが…甘えすぎちゃいけない。 あの人は優しい人だから、お前や…俺が訪ねて行くことを拒んだりしないだろう。 でもな、 彼は…人間だ。それも『オス』の。 これから恋をして人間のメスの番と結ばれて子供ができて。 そんな彼の人生の邪魔をしてはいけない。 俺達人狼が関わることで、彼の迷惑になってはいけないんだ。 …俺の言ってる意味、わかるな?銀波…」 見る見るうちに、銀波の目に涙が溜まっていく。 「…わかってる。わかってるよ、黒曜… でも、でもね…輝、優しくっていい匂いがして…本当のママみたいなんだよ… 僕…大好き…輝、大好き!」 俺は銀波を抱き寄せ、背中をトントンと叩いてやった。 「…うん、そうだな。 優しくっていい匂いがして、お日様みたいにあったかくって… 俺も大好きだ。 大好きだから、邪魔になってはいけないんだ。 …俺達がお世話になったお礼をきちんとし終わったら、もう、お別れしなくちゃ。 だから」 「黒曜…わかったよ。 僕、もう輝のところへは行かない。」 そう言うと、俺にしがみ付いて泣き出した。 辛い選択だが、後々のことを考えると、こうするしかなかった。 人狼として生きる者の覚悟が改めて必要な気がした。

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