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口実①

きちんとお礼をしなければ。 何をしたらいいだろう。 どうしたら喜んでもらえるだろう。 彼が持っている物も着ている服も、高級ブランドと言うわけではないが、さり気なく上品で、こだわりのある上質な物だった。 食事に誘う方がいいか、それともいつも使ってもらえる物がいいのか… あれこれ考えるだけでワクワクする。 でも… それは最後の… 「先生、何だか最近ご機嫌ですね。 何かいいことあったんですか?」 打ち合わせ中、編集担当の相葉君に揶揄うように尋ねられた。 「いや、特には。 そんなにご機嫌に見える?」 「ええ。何だか雰囲気が…言い方悪かったらごめんなさい。 …花が舞ってるようです。」 はぁ? と口をあんぐりと開けて彼を見た。 「花ぁ!?何だよぉ、それ。」 相葉君は笑いながら 「だって先生、『恋する乙女』みたいですよ。 あははっ!」 眉間に皺を寄せ、相葉君を睨みつける。 「先生、そんな顔したって怖くないですよ。 それに、イケメン度がますますアップして…」 ニコニコしている相葉君。 「『恋する乙女』って…別に恋してるわけでも何でもないよ。」 ぶつぶつ言うと 「そうだ!先生、この次の連載、恋愛モノに挑戦してみませんか? 『須崎 黒曜、初の恋愛小説! 私も恋をしたくなりました…』 なんてどうです? ミステリー作家の新境地! あぁ、ワクワクしてきましたよ!」 勝手に一人で盛り上がる相葉君。

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