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口実②

ため息をつきながら 「相葉君…君、勝手に盛り上がり過ぎ。 俺は、恋愛モノは書けないよ。」 「えーっ?何でですか? 今の先生なら大丈夫ですよっ! 俺、先生の、こってりでろでろラブロマンス読みたいです!」 「何だ?その、こってりでろでろラブロマンスって。 その、こってり系なら、金子先生や畑中先生がいるじゃないか。 俺の出番はないからな。俺の専門はミステリー。 これは絶対に曲げないよ。」 「えーっ、そんなぁー。 絶対にイケると思うんだけど…」 しばらくぶつぶつと独り言を言ってた相葉君は 「先生、俺、諦めませんからねっ! いつか、必ず書いて頂きますよっ!」 「諦めなよ。俺は絶対に書かないよ。 はい、この話は終了! さあ、打ち合わせ再開するよっ。」 「先生〜、そんな ご無体な…」 面倒臭い奴だな。 まあ、これくらい押しがないと、作家の尻を叩ける編集者にはなれないよな。 打ち合わせを終えて、お気に入りのブティックに顔を出した。 ここなら必ず好みのものが見つかるし見つけてくれる。 そして何より… 「あ、お久し振りです!いらっしゃいませ。 お気に召しそうなシャツ、入荷してますよ! どうぞごゆっくりご覧下さいね。」 顔馴染みの店長が声を掛けてきた。 彼も…獣人の血を引く一人だ。 こうやって、密やかに俺たちの仲間は人間社会に浸透している。 「こんにちは。ご無沙汰してしまって… あ、これ素敵だね。」 「でしょ?今からのシーズンに活躍しますよ。 この色ならどんなものに合わせても、控えめに主張してくれます。」 サラリーマンの彼にはシャツもいいな。 いや、ネクタイか?

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