28 / 337
口実④
決めちゃった。
気に入ってくれるといいんだけど。
後々残る物にしてよかったのかな。
すぐに消えてなくなってしまうものにすればよかったのかな。
ぼんやり考えながら、店内をうろうろと見て歩く。
「お待たせしました!」
店長が綺麗にラッピングされた紙袋を持ってきて、それをシンプルな店の紙バッグに入れてくれた。
「あ!ありがとう。」
「きっと喜んで下さいますよ。
私自慢のお品ですから!
またお越し下さいね。お待ちしてます。
あ、これ、銀波君に。」
銀のリボンの付いた、濃いブルーの包み紙を渡された。
「これは?」
「銀波君に私からのプレゼントです。
これ似合いそうだなって思ったので、ついつい個人的に仕入れちゃって。
近々来店して下さるような気がしてたんです。
よかった、お会いできて。
着てもらえるとうれしいです。」
「え…そんな…いいんですか?
うれしいな…遠慮なく。本当にありがとうございます!」
もう一度、ありがとう とお礼を言って店を出た。
なぜかうれしくて、スキップでもしたい気分だ。
銀波にまでプレゼントだなんて。
このシャツを着た葛西君を想像してみた。
あぁ、似合うな。
早く会いたい。
でも、それは…彼との別れの時。
会いたいけれども会ってしまうと、それで終わってしまう。
もう二度と会えなくなるけれど。
それでも終わりはきちんと。
俺は無理矢理自分を納得させて家路についた。
ともだちにシェアしよう!