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口実⑤

「ただいま!」 「お帰り、黒曜! あっ、『めじろや』のシュークリーム!」 銀波は『めじろや』という店のシュークリームが大好きで、俺が打ち合わせで外出する時には、必ずお土産に買ってやっていた。 「それとね、Merci(メルシ)の店長さんから、銀波にプレゼントだって。 開けてごらん。」 「うんっ! うわぁ…このシャツカッコいい… ねぇ、着てみてもいい?」 「あぁ、いいよ。」 お湯を沸かしコーヒーの準備をしながら返事をした。 キッチンから顔を出して様子を伺うと、うれしそうにもぞもぞと着替え始めた銀波を見て固まった。 これは… 彼にプレゼントするシャツと同じシリーズの子供服?? 「わーい!これ、すごくカッコいいよ! 店長さんにありがと言っといてね!」 「…あぁ。」 くるくる回ってご満悦な銀波を見て、やられた と思った。 あそこは紳士服専門店で子供服の取り扱いはしていない。 ただ本当に好意で銀波にこのシャツを買ってきてくれてたんだろう。 あの勘の鋭い店長は、揶揄いを込めて意図的にプレゼントの品物を勧めたのだろうか? 俺は何も伝えていないのに。 〆切が差し迫って、今更 別の物を探して買いに行っている時間もない。 内緒にしておこうか… 銀波に口止めを…いや、ハイテンションになれば何でも暴露してしまうからな… まぁ、バレた時は「偶然に頂いちゃって」で誤魔化せばいいか。 ケトルの音が鳴り響いて、慌ててヒーターのボタンを止めた。

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