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嬉々哀々(ききあいあい)①

会いたいような会いたくないような、複雑な気持ちのまま迎えた土曜日。 朝食を済ませ、コーヒーを飲んでいたが、いつになく緊張感漂う俺に、銀波は 「黒曜…いつもと違うよ?最近ずっと変だよ? …ねぇ、黒曜…」 「何だよ。」 「黒曜…ママのこと、好きでしょ? 本当はママと一緒にいたいんでしょ?」 ぶふぉっ、げほっ、げほっ コーヒーを吹き出した。 「うわっ、台拭き!ティッシュ!うわっ、熱っ!」 大騒ぎしてやっと片付けた。 「…銀波…お前…」 「だって、黒曜、ママを見る時、とっても優しい顔になるもん! オスがメスを誘う甘い匂いするもん! 好きなら好きって言えばいいじゃん!」 目に涙を一杯溜めて、銀波が訴えてきた。 「銀波…そう簡単にいかないんだよ。 それに…俺達は『人狼と人間』だ。世界がひっくり返っても番にはなれない。 いいか、余計なこと言うんじゃねえぞ。 何かしでかしたら、ここから追い出すからな。」 「黒曜のバカ。」 キッと俺を睨みつける銀波の目は立派なオスの狼になっていた。 俺は銀波を抱き上げ、膝に座らせると 「バカでいいんだ。 俺達に関わり過ぎると、アイツが不幸になる。 だから…頼む。もう、何も言わないでくれないか? 今まで通り、ひっそりとこのまま暮らしていければ、俺はそれでいいんだよ。 銀波…お前のことはちゃんとしてやる。 学校も、仕事も、人間との関わり方も。 お前はまだ幼いから、この世の中のことを知らな過ぎるんだ。」 「…大人って大変なんだね。 どうして好きなのに我慢するの?」

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