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嬉々哀々(ききあいあい)⑤
あれも美味しい、これも美味しい と、銀波と奪い合うようにして(それでもちゃんと味わって)、次々と平らげていった。
葛西君は空になった皿を下げて、すぐに新しく盛られた料理をうれしそうに運んでくれていた。
マジ美味い!
目尻が下がり、もぐもぐとひたすらに口を動かす俺達に、葛西君は笑いながら
「お代わりもありますから、ゆっくり食べて下さいね!」
なんて、優しい言葉を掛けてくれる。
「すっ、すみません!俺達ばかり!
滅茶苦茶美味しくて、箸が止まらなくって…
がっついて申し訳ない…
あ、でもちゃんと味わって食べてますからっ!」
必死で言い訳をする俺に笑いながら言った。
「あははっ!いいんですよ。
これだけ喜んで食べてもらえてるなら、作った甲斐がある ってもんです。
一生懸命作っても、いつも一人で寂しく食べてますから、今日はすごくうれしいんです。
遠慮しないでどんどん食べて下さい!」
その後も美味しい料理に舌鼓を打って、粗方お腹の満たされた俺と銀波は落ち着きを取り戻し、葛西君と色々な話をした。
特に中澤課長の話は大爆笑だった。
「ママがお仕事に行っちゃって、僕と課長さんと二人っきりになって…
怖い顔で近付いてきて、泣きそうになったら…『シルバちゃーん、おじさんと遊ぼうか』って抱っこされて…
『かわいいでちゅねー、もふもふでちゅねー』って、頭をぐりぐりされてさ、ちゅーもされた。キモい。」
ぎゃはははっ!!!
「そんな目に遭ってたのか…でもさ、シルバのこと、ほんっとにかわいがってたんだよ。」
膨れっ面の銀波をよそに、俺と葛西君は顔を見合わせて、また笑った。
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