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胸に空いた隙間は③
side :輝
呆気ない別れ方に頭がぼんやりして付いていってない。
もう、二度と会えない。
そう思うと泣きたくなった。
シルバ…泣くほど辛かったのか?
須崎さんの結婚相手と相性合わないんだろうか。
俺が心配することはないんだ。
でも、遊びに来るくらいはいいのに。
お相手が嫉妬深くてダメなのかもしれないな。
俺の料理をあんなにうれしそうに食べてくれるなんて。
毎日こうだといいなと思った。
誰かと暮らすって、こういうことなんだなって勝手に想像してた。
男同士とか、獣人だとか、そんなことはどうでもよくって。
ひょっとして….俺はあの人に惹かれていた?
いや、もう、初めてあった時から恋に落ちていたのかも。
もう会えないんだ。
あの時の須崎さんの顔、ものすごく辛そうだった。
なぜそんな顔をするのかわからなかった。
『俺』という存在が邪魔だったのか?
誰かと結婚するなら…俺達は別に付き合ってたわけでも何でもなかったのに。
かちゃかちゃと食器を洗いながら、楽しかったさっきまでの時間を懐かしんだ。
獣人だとか人間だとか、関係ないのに。
いつも哀しみをたたえたような、あの人の瞳が切なかった…
獣人であることに、必要以上にストイックに考えているようで、それも辛かった…
一人で辛い思いをしていたあの人を癒してあげたかった…
『美味しい』と喜んでくれる俺の料理を毎日食べさせて、哀しみを少しでも和らげてあげたかった…
悶々としながらも、手早くスッキリと片付けてお湯を沸かすと、一緒に飲もうと準備していたコーヒーの封を切った。
部屋に広がる香りを感じながら「一緒に飲みたかったな…」と思わず独り言が口から溢れた。
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