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胸に空いた隙間は④
沈んだ気持ちのまま始まった月曜日。
「…やっぱりシルバちゃんはいないのか…」
「おはようございます。課長…朝の第一声がそれですか?
もうね…シルバは飼い主さんのところに帰っちゃったんです!
俺が同伴出勤することは二度とありませんからっ!
…俺だって…俺だって、凹んでるんですっ!」
リードを持ってがっくりと項垂れる課長を怒鳴りつけるように声を荒げ、席に着いた。
まだ他の誰も出勤してなくてよかった。
シルバがいなくて落ち込んでるのは俺の方なんだ!
でも言い過ぎたかな…何も怒鳴ることはなかったのに。八つ当たりしてしまった。
「葛西…悪かったな。」
課長?“あの”課長が謝った!?
「この気持ちを共有しよう…そうだ!俺、犬を飼うぞ!」
「はあっ!?」
「あの子みたいなもふもふのキュートな子を探して来るっ!
…葛西、俺午前中半休取るから、後よろしくな!」
カバンを掴むなり、あっという間に課長はトンズラしてしまった。
課長…月曜日ですよ?
仕事、溜まってるはずですよ?
まだ…ペットショップは開店してませんけど…
どこ行った!?
呆気にとられてその後ろ姿を見送った。
「おっ、葛西、おっはよー!
なぁ、課長すっ飛んで行ったけど、何かトラブルか?」
「…いや…俺の口からは言えない…午前中、半休取るって言ってた…
「何だよ、それ?
…まあ、いいか。五月蝿いのがいないなら午前中はのんびりすっか。」
呑気だ。ウチの会社は呑気過ぎる!
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