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胸に空いた隙間は⑧
野次を飛ばしてくれていたのは、日頃からあの女のことをよく思ってない女子社員と、被害に遭っていた(あのベタベタのせいで、彼女と別れざるを得なかった)同僚達だった。
「葛西、よくぞ言ってくれた!
これで彼女と俺も復活できるかもしれない!」
「ありがとう、葛西…俺、言いたくても言えなかった…」
「あー、スッキリした!葛西君、見直したわよ。ただのイケメンじゃなかったのね!」
「あのスケベ高木め…アイツの仕事は受けてやらないわ!」
一瞬にしてヒーロー扱いされて、戸惑いながら部屋に入ると、課長がモコを撫でながら
「おはよう!朝から一発やらかしたらしいな。
でもさぁ、あちこちで被害者が出てるから、いいクスリになったかもね。
よくやったよ、葛西!
さあ、モコで癒されるといい!」
突然押し付けられたモコは、俺を見つめ
きゅーーん!
と鳴いた。
あぁ、至福!すりすりとモコに頬をすり寄せ、もこもこを堪能していると
「はい、時間切れ!」
と課長にモコを撤収されてしまった。
「コイツは、俺にとって福の神なんだよ…」
と愛おしげにモコを撫でる課長の話によると、昨日モコを家に連れて帰ると、奥さんも娘さんもなぜか大喜びで、数年振りに家族の会話ができたそうだ。
親父の株も上がったり…で、そりゃあ、よかったよかった。
俺は…
その日は今朝の一件のせいで、いろんな人に揶揄われ、賞賛を受け、ぐったりと疲れ果てた。
今日も早く帰ろう…心に決めてデスクに向かう。
時々、待受けのシルバの画面を見るが、そんなものでは癒されない。
ため息をつきながら淡々と仕事をこなしていった。
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