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胸に空いた隙間は⑨

今朝の騒動で早瀬は、静観していた上司から今までの行いにお灸を据えられ、そのとばっちりを食った高木とともに男女を問わず社内中からの冷たい視線と態度にビビり(あのバカ女を勇者然として庇った高木もバカだ)、あの二人は影を潜め小さくなっていた。 それでも辞めないのは大したもんだ。 モコを溺愛する課長を横目に見つつ仕事に精を出し、やっと迎えた週末。 行きつけのスーパーに立ち寄り、両手にパンパンの袋をぶら下げてヘロヘロで帰宅した。 どさりとテーブルに荷物を置くと、さっさと片付ける。 さて、今夜は気合を入れて…肉だ!半額のステーキ肉買ったし、昨日の残り物もあるし。 米を炊いてワイングラスも冷やして… 下ごしらえもパパッと… 後は焼くだけ!あぁ、お腹空いたなぁ… 先に風呂入っとこーっと。 ジューーーッ 何とも言えないこの匂い! 食欲をそそる…もう、限界だ… 「いただきますっ!」 何て幸せ…ワインも美味い! 今週は最悪なスタートだったけど、制裁加えられたから、まぁ、いいか… 残ったワインをチビリチビリ飲んでいると、携帯が鳴った。 ん?こんな時間に誰だろう… ほろ酔い気分で画面を見ると 『須崎 黒曜』 !!!!!!!!!! 何で?どうして? いつまでも鳴り響くそれに、意を決してスライドした。 「…もしもし?」 「ママぁーーーー!」 「…シルバ?どうしたんだ?」 泣き声のシルバに驚きながら、優しく問いかけた。 「黒曜がっ、黒曜がっ…」 「須崎さん?須崎さんがどうしたんだ?」 「昨日から…熱が出て動けないの…ご飯も食べないの…僕、どうしていいのかわからなくて… 黒曜が死んじゃう! ごめんなさい、ママに連絡しちゃダメなのに… 僕、僕、どうしていいのかわからなくて…ごめんなさい…」 えぐえぐと泣きながらも必死で伝えてきたシルバを抱きしめたくなった。

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