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胸に空いた隙間は⑩
俺の携番、消去してなかったんだ…
うれしさがこみ上げてくる。
「…シルバ、大丈夫だから。
俺、今からそっちに行くからお利口で待ってろ。いいな?」
「…うわーーん、ママぁ…うぐっ、うぐっ」
「わかったから、泣くな。すぐに行くから。
じゃあ、電話切るぞ。後でな。」
須崎さんが熱?風邪かな…
とにかく準備して行かなくちゃ。
『昨日から動けない、何も食べない』と言うことは、シルバもまともなものを食べてないはず。
大変だ!
俺は急いで残ったご飯をおにぎりにして、作り置きしていたおかずをタッパーに詰め替え、何か食べれそうな物を袋に詰め込むと家を出た。
途中薬局に寄って、冷えピタやら保冷剤やらゼリーやら、色々と買い込んだ。
行ってもいいんだろうか。
『これでお別れ』と言われたのに。
そうだ…彼女がいるんじゃないのか?
シルバはどうして俺に連絡を?
それに須崎さんはなぜ彼女を呼ばないんだ?
頭をぐるぐると回る考えを押しのけ、両手一杯の荷物を抱えながら、とにかく正面玄関までタクシーを飛ばして辿り着いた。
恐る恐るインターホンを押す。
「ママぁーーーー!!」
すぐに空いたドアに滑り込み、エレベーターに飛び込んだ。
玄関ドアを開けてシルバが待っていた。
「ママっ!ママぁ…」
「お利口で待てたな。須崎さんは?」
「…苦しそうに、唸ってる…」
「ん、わかった。じゃあ入るよ。」
どんよりとした空気。
乱れた室内。
洋服はソファーに山積みになり、カップ麺やお菓子の袋が散らばっている。
これ…彼女がいる人の部屋?
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