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あなたの本当の姿②

真っ黒い大きな狼の顔! 一瞬息を飲んだが不思議と恐怖感はなかった。 名前の通り、黒曜石のような美しい漆黒の毛並みに見惚れていた。 それが須崎さんだとすぐに理解して、遠慮しつつそっと頭に触れた。 もふっとした肌触りにキュンとするが、すぐにその尋常じゃない熱さに気付く。 熱い。かなりの高熱だ。脱水症状を起こしてたら大変だ! どうやって水を飲まそうか… 「ごめんなさい、起こします。」 やっとのことで、その大きな身体を抱え込んで、経口水をスプーンで掬い、熱く荒い息を吐くその口元へそっと差し入れた。 舌の上に乗せてあげると、コクンと飲んでくれた。 数十回繰り返しペットボトル一本空にして、今度は少し溶けかけたアイスクリームを舌に乗せる。 これも器用に飲み込んでくれて、ホッとした。 もういらないとでも言うように、鼻先を横に振ったので、そっと横にしてあげた。 一旦部屋を出て、シルバが夢中になって食べているのを確認してから、保冷剤と、人の家を漁って申し訳なかったが、タオルを探して、また寝室へ戻った。 ベッドサイドで保冷剤をタオルで巻いていると、掠れた声がした。 「…葛西君、どうして?」 ハッとして横を見ると、人型に戻った須崎さんが起き上がろうとしていた。 その上半身は何も身につけておらず、がっしりと逞しい綺麗な身体つきに、目のやり場に困ってしまった。 慌てて 「そのまま横になっていて下さい! ごめんなさい、シルバから連絡をもらって来たんです。 ご迷惑でしょうけど、緊急事態ですから。 何か口に入れますか?水、飲みますか?」 「…すみません…じゃあ、水を。」 ペットボトルのキャップを緩めてストローを差し口元へ持っていくと、ありがとうと呟いて、あっという間に空にした。 余程喉が渇いていたのだろう。

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