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あなたの本当の姿⑤
シルバを抱き上げて、布団に寝かせた。
俺の洋服をぎゅっと掴んだ手をちょっと辛いけれど、一本ずつそっと離していく。
小さな手。
この手で何を掴もうとしているのか。
掴み損ねたものは一体どのくらいあるのだろうか。
頭を撫で、額におやすみのキスをしてその場を離れた。
二人が寝ている間に、なるべく音を立てないように気を付けながら片付けをはじめた。
洗濯機を回し、ソファーの上に積み上げられた洋服を畳み分けていく。
流しに積まれた食器を洗い拭き上げ 、シンクやガス台も磨き上げた。
掃除機を掛けれないので、這いつくばるようにしてフローリングの床を雑巾掛けし、コロコロで絨毯のゴミを取っていった。
ようやく部屋も片付き、思い立ってお粥を作ってみた。
少し熱が下がるとお腹も空いてくるだろうし。
何だか…家族みたい。
様子が気になって、そっと須崎さんの寝室を除き、枕元に膝をついて座った。
彼はまだ狼の姿でぐっすりと眠っていた。
起こさないように伸ばした手で彼の頭に触れ、先程より体温の低さを感じてホッとした。
保冷剤を換えたいけれど…
このまま下がれば大丈夫だろう。
そう思い立ち上がろうとした時
「…葛西君…」
呼び止められ心臓が止まるかと思った。
いつの間にか人型に戻った須崎さんが半身を起こしていた。
「あ…起こしてごめんなさい。様子を見に来たんです。
熱が少し下がったみたいですね、よかった。
お粥ができてるんです。一口いかがですか?」
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