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あなたの本当の姿⑥

「ありがとう…少し頂くよ。でも、その前にお願いが…」 「はい、何でしょうか?」 「水を…お願いできるか? それと…図々しいんだけど… 俺がまた寝付くまで、頭を撫でてくれないか? 意識がなくなると狼に戻るかもしれないけど。」 「ふふっ、いいですよ。その前に、保冷剤交換しましょう。 ちょっと待ってて下さいね。」 可愛いお願いに心が踊っている。俺なんかに甘えてくれてるんだ… 少し元気になってよかった! 水を飲ませ、お粥を食べさせ、また冷えピタと保冷剤を換えた。 直に触れた身体は、まだ少し熱かったが、先程よりはずっとマシだった。 彼のリクエスト通り、頭を優しく撫でていく。 「早く元気になーれ。」 おまじないのように思いを込めて。 そのうち、寝息を立て始め、撫でていた黒髪はたてがみとなり、もふもふの身体に変化した。 ああっ!かわいいっ! 綺麗な毛並み…撫で続けていたい… 俺、この人が人間でも狼でもどちらでも構わない。 『須崎黒曜』という、この人が好きなんだ。 携帯のアドレスも消さずに保存しておいてくれた。 今も甘えて身体を委ねてくれている。 元気になったら、俺の気持ちを伝えよう。 自分の気持ちに素直になったら、何だか眠たくなってきた。 だんだん瞼が下がってきて、俺は彼の首に抱きつくようにして眠ってしまっていた。

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