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病み上がりの狼①
side:黒曜
いい匂いがする。
頭痛も吐き気も治まってた。
首元が…温かい。
ゆっくりと目を開けると、そこには…
(葛西君!?)
俺の首に抱き付いて、葛西君が眠っている。
彼が、なぜここに?
何となくぼんやりとだが、記憶があった。
確か銀波が電話をして飛んできてくれて、銀波にご飯を食べさせ、俺の世話をして…
一晩中付いててくれたのか?
目の前に愛おしく思う人が無防備で眠っている。
人型に戻り思わず唇にキスをした。
「んっ…んー」
葛西君が身じろぎして目を覚ました。
言えば怒られるかもしれないが、王子のキスで眼を覚ます眠り姫のようだ。
「おはよう。看病してくれてありがとう。
ずっと付いててくれたんだね?
お陰で熱も下がったみたいだ。
身体、痛くない?」
「おっ、おはようございますっ!
元気になってよかったです!
あ、シルバ、シルバも起きてるかも。
朝ご飯準備してきますね!」
真っ赤になって出ていってしまった。
身体はまだしんどいけれど、最高に幸せな気分で満たされていた。
汗もかいたし、シャワーを浴びてさっぱりしてこよう。
脱ぎ捨てていたスウェットはきちんと畳まれていた。
葛西君だ。
手早く身に付けると、カーテンと窓を開けた。
涼やかな風が頬を撫でる。
ドアを開けると銀波が飛び付いてきた。
「黒曜!お熱下がった?元気になった?
ママのお陰だよ!」
「うん、そうだね。たくさんお礼しなくっちゃ。」
足元を飛び跳ねる銀波の頭を撫で、バスルームへ行きかけ、部屋が綺麗になっているのに気が付いた。
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