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病み上がりの狼②

まさか、葛西君が…? 〆切の修羅場突入でただでさえ家のこともできずにいて、それプラス葛西君との別れで凹んだ心と、疲労から熱を出して倒れてしまい、家の中はぐちゃぐちゃだった。 幼い銀波の面倒も見ることができず、ダウンしてしまっていたのだった。 俺が高熱で伏せっている間、銀波はどうすることもできず、葛西君に助けを求めたのだ。 その求めに、彼はどう思ったかわからないが、飛んできて銀波にご飯を食べさせ、俺の看病もしてくれた。 その上、銀波と俺の面倒を見ながら片付けてくれたんだろう。 何てできた(ひと)なんだろう。 「須崎さん!起きれたんですね! お粥ができてます。どうぞ!」 「ありがとう。 家の中も…君が片付けてくれたんだね。 面目無い…みっともないところばかり見せてしまって…申し訳ない…」 「いいんですよ! 俺なんかを頼って電話してきてくれたシルバに感謝しなくっちゃ。」 「感謝?」 「…もう、二度と会えない…って思ってたから…会えて…うれしい…」 言葉に詰まって葛西君は俯いてしまった。 「ママぁー!お腹すいたよ!」 「あっ、ごめん、ごめん! じゃあご飯よそうから、お茶碗持ってきて!」 「はーい!」 銀波め…いいところだったのに。 邪魔するなよ! 二人の楽しそうな声を背中に聞きながら、がっくりと肩を落としバスルームへ一人寂しく向かったのだった。

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