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病み上がりの狼③
汗を流し伸びていた髭も剃り、さっぱりと気持ちよくなった。
お腹もぐうぐう鳴っている。熱は完全に下がっていた。
「須崎さん、はい、どうぞ。」
湯気の立つお粥が目の前に出された。
銀波には、海苔を巻いた小さな俵形のおにぎりと、玉子焼きにタコさんウインナー、野菜サラダとお味噌汁。
葛西君の前にも、銀波と同じものが。
三人で手を合わせ、いただきます と声を揃えて言うと、うれしくなって笑ってしまった。
不思議そうに首を傾げて俺を見る君の仕草がかわいくて、つい見つめてしまう。
幸せな朝。
毎日こうだと、どんなに張り合いがあるのかな。
美味しく頂いて、また三人で手を合わせ、ご馳走さま と声を合わせ一緒に片付けた。
「葛西君。」
「はい。」
「本当にごめんね。俺達は、君を振り回してばっかりだ。
もう会わないと言ったくせに、またこうやって君に面倒を見てもらっている。
本当に…申し訳ない。」
「須崎さん…」
「でも、また会えたことに偶然じゃなく必然を感じている俺がいるんだ。
運命…そう、俺達は運命の…」
「須崎さん!俺、俺は…」
ピンポーーン
「おはようございまーす!お荷物届いてます!」
「黒曜ーー!荷物来たよぉ〜!」
チッ。また邪魔か。
こんな時に頼んでた資料が届くとは…空気読めよ、空気。
ため息をついてロック解除して受取りをする。
次の連載のイメージ用の写真集や裏付けのための専門書等々ダンボール二箱分。
こうやって本が増えて、部屋が占領されていく。
そうだ…あの部屋を整理して、仕事部屋を片付ければ、ひと部屋確保できる…そう、彼のための…
勝手な妄想を繰り広げる俺だった。
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