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病み上がりの狼④
仕切り直しだ!
気合いを入れてリビングに戻ると、銀波が葛西君に甘えて抱っこされていた。
俺も…俺だって、もふもふされたいんだっ!
無邪気に戯れる幼い銀波に対してムカムカと嫉妬心が湧き上がる。
大人気ないのはわかっている。
ずんずんと二人の前に立ち塞がると
「銀波、ちょっとこっちにおいで。」
と銀波を子供部屋へ連れて行った。
「黒曜、なぁに?」
「銀波…俺は今から葛西君に大切な話があるから、ここにいてくれないか?
終わったら…呼びに来るから。」
銀波は耳をピッと立て、尻尾を勢いよく振りながら
「大切な話?黒曜、それって…」
「俺の気持ちをちゃんと伝えてくる。
受け入れてもらえなくても…」
「…うん、わかった。ちゃんとお話ししてきてね。」
「いい子だ、銀波。」
銀波の頭をくしゃくしゃと撫でて、ちょっと緊張気味に座っている葛西君の前に正座した。
「葛西君….君に話したいことがあるんだ。」
「はっ、はい、何でしょうか?
あのっ、突然押し掛けたことは謝りますっ!
でも、俺も心配だったし、あれからずっと気になってて、会いたくて…でも彼女さんがいるなら、俺の存在は迷惑にしかならないって思ってたから…
ごめんなさいっ!」
言いながら、だんだんと顔が真っ赤になっていく葛西君。
何だか告白されている気分になってきた。
「いや、そうじゃないんだ。
来てくれて本当にありがとう。
君のお陰で銀波も俺も、本当に助かったんだ。
ありがとう。」
目一杯頭を下げた。
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