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病み上がりの狼⑤
「おまけに部屋の掃除までさせてしまって…仕事で疲れて休んでいる時に申し訳なかった。
言い訳だけど、地獄の〆切が終わって疲労困憊 で…
それに…
君に会えなくなったのが一番堪 えた。
自分で勝手な言い訳を作って、自分から離れておいて…今更なんだが…
そういうのが全部合わさって熱が出てしまったみたいなんだ。」
「あの…婚約者…彼女さん…は?」
「あれは、咄嗟についた嘘だ。
俺達人狼に関わるのは、葛西君のためにならないと思って…
君はいずれ人間の女性と結婚して幸せな家庭を作るだろう。
その時に、怪しい正体不明の俺達と親しくしていたら、誤解を招いたりして君の立場が危うくなるかもしれない。
だから…
君のことをもっと好きになる前に縁を切ろうと思ったんだ。
でも、俺の正直な気持ちをきちんと伝えておこう、伝えなきゃと思った。
葛西君…
俺は人狼で男で子持ちだけれど、あなたのことが大好きなんです。
色恋の意味で。
あなたに…心奪われてしまいました。
優しくて明るくて穏やかで料理上手で…一緒にいると心が落ち着く…素の自分でいられる…一生、あなたと暮らしたい、俺の側にいてほしいと思うようになってたんです。
あ、断られるの覚悟してますよ。
遠慮なく振って下さっても大丈夫ですから。
突然、こんなこと言ってすみません。
迷惑ですよね?」
一気に話し続け、俯いた。
熱がぶり返したかのように火照っている。
顔はおそらく、真っ赤だろう。
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