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病み上がりの狼⑩
滾る欲望を必死で押さえ、高まっていく思いを込めて、長い長いキスをした。
輝は…
俺の行為の全てを受け入れてくれ、身も心も委ねてくれていた。
その拙い動きは、経験のなさを物語っていたが、溢れる想いがひしひしと伝わってきて、うれしかった。
ちゅっ と大きな音を立てて唇を離すと
「黒曜さん…俺、俺、幸せです。
あなたとこうしていられるなんて…夢みたい。」
そう言う輝は、涙声で。
そっと胸に擦り付いてくるその頭を撫で腰を抱き寄せる。
愛しい人。
「後悔させないから…側にいてくれないか?」
黙ってふるふると震えながら頷く輝が愛おしくて愛おしくてたまらなかった。
突然
「あっ!シルバ!シルバを放ったらかしにしてるっ!」
と慌てて抜け出そうとするから
「大丈夫だ。シャワーを浴びてからにしないか?
このままだとべたべたするぞ?」
と抱き上げてバスルームへと運んでやる。
「一緒に入ると興奮するから、今は別々で。」
と言うと、ぼっと火がついたように真っ赤になった。
かわいい。かわい過ぎる。
先に入らせて脱ぎ散らかした服を取ってきてやった。
入れ替わり俺もシャワーを済ませて着替えると、二人で銀波の部屋へ足を運んだ。
「銀波。待たせて済まなかったな。」
「黒曜!ママは?」
「一緒にいるよ。待たせてごめんね。」
「ママ!…ママ、黒曜の匂いがする…
黒曜もママの匂い…
ねぇ、二人は結婚したの?」
二人同時にむせた。
真っ赤になりごほごほ咳込みながら銀波を見ると、うれしそうにくるくる回っている。
「やったぁー!ママが本当のママになった!
やったぁー!やったぁー!」
チビ狼に戻って足元にじゃれ付く銀波を抱き上げ、輝が頬ずりする。
目の前の幸せな風景に、俺は暫く声もなく見惚れていた。
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