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新しい生活①
時々唸りながら腰を押さえる俺。
そんな俺の横にぴったりと張り付いて離れない黒曜さん。
チビ狼になって部屋中を飛び跳ねているシルバ。
「黒曜さん…俺、そろそろ帰ります。
明日から仕事ですし…」
「えっ!?輝…歩けないのにどうやって帰るつもり?
今日はゆっくり休んで、ここから出社するといい。その方が近いじゃないか。 」
「きゅうっ!くぅん、くぅん!」
「でも…スーツもカバンも置いてきてるし…」
「俺のせいだよな…すまない…」
いつの間にか正座している黒曜さんは反省しきり。
ガックリと肩を落として俯いてしまった。
「いえ、その…俺も、俺だって…その…」
昨夜の行為を思い出して、歯切れも悪く言いかけると
「必要なものを言ってくれれば、俺が取りに行くよ。
輝はしばらく動かない方がいい。」
「えっ…でも…そんなの申し訳ないです…」
「がう、がうがうっ!」
「俺がそうしたいんだ…輝、頼むよ…」
うーんと唸って
「…それじゃあ、甘えてそうさせてもらってもいいですか?」
「きゅうっ!きゅうっ!」
「輝、もちろんだよ!任せてくれ。
何を持ってくればいい?」
「えーっと…着替え…クローゼットのスーツとワイシャツ…左に掛けてある一式と、靴下とハンカチと…デスクの上のカバンと…
あっ、革靴もお願いします。」
「わかった。他に思い出したら電話掛けてくれ。
食事は俺が準備するから、輝は絶対に動くなよ。
銀波、輝が大人しく寝てるように見張っててくれ。頼んだよ。」
「きゅん、きゅん、きゅうっ!」
黒曜さんはシルバの頭を撫で、俺にキスをすると出て行ってしまった…
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