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新しい生活②
人型になり着替えを済ませたシルバが、遠慮がちにドアから覗いている。
「シルバ?こっちにおいで!どうしたの?」
「…だって…黒曜と約束したの。
『寝室には入らない』って。」
「…え…」
その意味を瞬時に理解した俺は、ぼふっと音が出たかと思うくらいに真っ赤になった。
慌てて
「今はいいから!こっちにおいで!」
そろそろとシルバが俺の側に寄ってきた。
ふふっ。耳が垂れてる。
そっと手を伸ばし、頭を撫でてやる。
「…ねぇ、ママ…お願いがあるの…」
「ん?何?」
「あのね、あのね…僕、ママと一緒にここで暮らしたい!
夜寝る時もママに頭を撫でてほしい。
ご飯も一緒に食べたい。
お風呂も一緒に入ってほしい。
ママと一緒にいたいの…」
「シルバ…」
「ねぇ、黒曜もずっと一緒にいたいって言ってたよ!?
ママにお願いするって。」
尻尾を振りながら、シルバが甘えた声を出している。
黒曜さんとシルバと三人で暮らす…
もしそうなったら、どんなに楽しいだろう。
「…そうなったら、どんなに楽しいだろうな…
でもシルバ。
俺達は家族じゃないよ。
一緒に住むには解決しなきゃならないことがたくさんあるんだ。
だからさ、黒曜さんにお願いして、こうやって時々お泊りさせてもらおうかな…」
「…時々?毎日がいいなぁ…ママ、だぁいすき!」
ぺろぺろと俺の頬を撫でるシルバを片手で抱きしめてやると、シルバはチビ狼へと変化した。
「きゅうん、きゅうん」
そのまま丸まって布団に潜り込んできた。
もふもふの柔らかな毛並みを胸躍らせて撫でているうちに、シルバは眠ってしまったようだ。
規則正しいお腹の動きが何とも愛くるしい。
もふもふを堪能しながら、いつしか瞼はゆっくりと落ちていった。
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