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新しい生活④

もぞもぞと起き上がっているうちに黒曜さんがトレイに乗せて持ってきてくれた。 いい匂い!シチューだ! 「ごめんなさい、あっちに行きます!」 「いいんだ、ここで…大丈夫?座れる?」 「はい、何とか。」 黒曜さんが枕とクッションで位置を調整してくれた。 ふぅーっ…うん、大丈夫。 「ほら、輝、あーん。」 「えっ!?えっ!?」 「ほら、冷ましたから大丈夫だよ。 あーん。」 つられて口を開けた。 んっ。もぐもぐもぐ…ごくっ…美味しい! 「黒曜さん!すっごく美味しいですっ! あの…自分で食べますから…」 「…よかった…そうか…自分で?…」 スプーンを持ったまま、しゅん と項垂れてしまった黒曜さん。 なかなかそのスプーンを渡してくれない。 「…あの?」 「…うん…」 「…スプーンを…」 「…うん…」 「…黒曜さん?」 あ!…俺に“あーん”して食べさせたかったんだ! ちょっと恥ずかしいけど… 「…黒曜さん?」 「はい。」 「食べさせて!?…あーん」 俺は目を瞑って、口を大きく開けた。 「輝、入れるよ。」 目を瞑ってもわかる、黒曜さんの破顔した顔。 ぱくり…もぐもぐもぐ…ごくん。 「…美味しい?」 「はい!とっても! でも…めっちゃ恥ずかしいですっ!」 あははっ と黒曜さんが笑う。 「だって輝だって、俺にしてくれたじゃないか。 おあいこだよ。」 「あっ、あれは黒曜さんが熱で動けなくって… ぐったりしてたし…その…」 「今、輝だって動けないじゃないか。 ちょっとぐらいイチャイチャしたって…いいだろ?」 拗ねるように言う黒曜さんが子供みたいでかわいい。 おかしくって笑うと腰に響く。 「痛たたたっ…わかりました。 じゃあ、イチャイチャさせて下さい。」 …お皿が空になるまでそれは続いた…

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