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新しい生活⑥
俺は腰が痛むのも忘れて飛び起き、黒曜さんの胸にしがみ付くと全力で否定した。
「そんなっ!後悔なんてする訳ないっ!
俺は…俺は…あなたと出会えて、想いを寄せ合って、こうやって結ばれて…本当にうれしい…よかったと思ってるんです!
俺を選んでくれて、本当に……うれしい…
大きくなればシルバだってきっとここを出て行くでしょう?
大好きな人と巡り合って。
その時に、俺が…俺があなたの側にいることができれば…って、そう思ってたら…」
「輝っ!」
黒曜さんが俺をぎゅうっと抱き寄せた。
「…輝……輝…」
俺を抱きしめ、名を呼ぶ黒曜さんの身体が…震えている…
「…黒曜さん?」
「…っ…輝……」
ぽたっ
俺の頬に冷たい物が触れた。
えっ…
「…っ…っく…輝っ…っ…」
そっと上を向くと…
黒曜さんが唇を噛み締め、肩を震わせて…泣いている!
震えながら嗚咽するその顔は…子供みたいで…
俺は、つ…と手を伸ばし頬を流れる涙を愛おしさを込めて拭き取った。
目尻に光る涙を ちゅっ と音を立てて吸い取り、両手を頬に添えて、触れるくらいの優しいキスをした。
「…輝…」
びっくりした顔の黒曜さんに、とびきりの笑顔を見せて
「黒曜さん、大好きです!
俺を…一生側に置いて下さいますか?」
青い瞳がこれ以上ない程 見開かれた。
…黒曜さんは何も言ってくれない…
俺では…俺ではダメなのですか?
「…輝、本当に?
俺と一緒に…一生俺の側にいてくれるの?」
萎 みかけた俺の心を黒曜さんは一気に引き戻した!
「もし『お前に飽きた』と言われても、離れませんよ。」
得意気に宣言した。
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