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新しい生活⑦

その日のうちに、俺は、黒曜さんとシルバとの同居に二つ返事で同意してしまっていた。 「銀波が聞いたら、うれし過ぎてまた走り回ると思うよ。 俺だって狼になって走り回りたいくらいだ。」 まだ少し目元の赤い黒曜さんがうれしそうに言った。 「でも、本当にいいんですか? 俺達他人なのに…」 「そのことなんだけど。」 黒曜さんが居住まいを正して正座をするもんだから、俺も慌ててベッドの上で正座をした。 「この前はちょっとあんまりな場面で言ってしまったから…改めて言わせて下さい。 輝…俺と…結婚して下さい。 君を失ったら俺はもう二度と番を持てない。 それくらい相性がいいんだ。 君と籍を入れたい。 銀波のママになって下さい。」 プロポーズ!? あぁ、そうだった。 エッチの真っ最中に告白されて、後でちゃんと言うからと言われていたんだった。 「黒曜さん、本当に俺でいいんですか?」 「それは俺の台詞だよ! 俺は人狼で、オマケにコブ付きだ。 そんな俺を丸ごと受け入れて、一生側にいてくれると言う、輝がいいんだ。 いや、輝しかダメなんだよ。 でも… 俺達が良くても、輝のご家族はどう思われるんだろう…許してもらえるのだろうか…」 しゅんと項垂れた黒曜さんは続けて言った。 「俺達の気持ちばかり優先しても、輝の家族が受け入れてくれなければ…板挟みになる輝が辛い思いをしてしまう。 俺は男だ… それに、俺と銀波が人狼だと分かれば、どうするのか…」 黒曜さんはキッと顔を上げると、俺を目を見つめて言った。 「家族を取るか、俺と銀波を取るか、という選択を迫られるかもしれない。 それでも…たとえ反対されたとしても、もう、俺は輝と離れるなんてことは考えられない。 輝…俺はあなたの存在そのものが愛おしい。 愛しています…」

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