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呑気な両親⑧

(俺も…俺も、そう思っています…) 思いを込めて目で答え、しっかりと頷いた。 黒曜さんが、ふっ と微笑んだ。 「あーあー、いいなぁ…俺も早くラブラブな恋人がほしい…」 揶揄いがちな兄のボヤキに吹き出すと 「あんまり俺の前でいちゃいちゃするなよな。 嫉妬するから。いじけるぞ。」 と、また言うもんだから、黒曜さんと大笑いした。 「ところでさ。」 兄が急に真顔になった。 「あくまでも噂なんだけど、変化する人狼の子供が拐われる事件があるらしいんだ。 気を付けるに越したことないから、シルバちゃんのこと、注意しといたほうがいい。」 どうやら兄なりの人狼情報網があるみたいだ。 正体を受け入れてからの順応性は半端ない。 「わかりました。 今のところはまだ、保育園には行ってないですし、殆ど家から出たことがないので… もし、変わったことがあれば教えていただけませんか?」 「オッケー! じゃあ、携番交換しよう!」 二人は赤外線通信でさっさと情報交換を終えた。 「ママー!」 シルバが、ぼふっと俺の胸に飛び込んできた。 きゅうっと縋られて、泣きそうになった。 どうやら大人三人の相手に限界がきたらしい。 「あらあら、やっぱり輝が一番なのね。 輝、すっかり、ママさんなのね。」 祖母に揶揄うように言われて 「そうだよ!俺、ママだからっ!」 と真っ赤になりながらも返すと 「俺達に孫ができるなんて…なぁ…」 「私、おばあちゃんなのねぇ…でも、名前で呼んでほしいかも。 “みっちゃん”って呼んでもらうことにする!」 「うーん、俺は“じいちゃん”の響きが好きだから…“たけじいちゃん”にしよう!」 …相変わらず呑気な二人だった。

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