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呑気な両親⑨

せっかく来たからと、三人とも泊まっていくことになった。 元々そのつもりだったらしい。 用意周到、キャリーバッグに必要な物を詰め込んで来ていた。 昼ご飯を簡単に済ませてから、男手はたくさんあるから、布団の準備から机の移動から難なく済ませた。 それからゆっくりと、今まで秘密にされていたことや聞けなかったこと…困った時にはどこに行けばいいのかは祖母のルートとは別に、両親も、兄も、独自で開発したルートを持っていたから、教えてもらった。 紹介者の名前を出せば、俺達も利用できるそうだ。 兄は…人狼だと知ったのは去年のことなのに、すっかりその世界に馴染んでいて、もうこんなに把握して活用してるなんて、やっぱりすごい人なんだと思った。 逆に黒曜さんのルートは特殊らしく、みんなは感心しながら聞いていたのだが、俺にはさっぱりわからず、とりあえず知識として頭に入れておこうと一生懸命聞いていた。 シルバは俺の膝に抱かれていたが、やがて背中に隠れるように姿を隠すと、チビ狼の姿になり、また俺の膝の上で丸くなった。 人型になったままというのは、今のシルバには少しキツい。 「まぁ、かわいい!綺麗な銀色… だから『銀の波』で『シルバ』ちゃんなのね… 銀波ちゃん、“みっちゃん”の所へいらっしゃい!」 シルバは俺の膝から飛び降りると、手を広げる母の元へ飛んで行った。 きゅうんきゅうん!と甘えるシルバを見て黒曜さんが呟いた。 「今まで俺と二人きりだったから、こうしてたくさんの甘えさせてくれる人達がいてくれるって…本当にありがたい… 輝…ありがとう」 黒曜さんの目が微かに潤んでいる。

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