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二人の想い①

俺はどうやら黒曜さんにくっ付いたまま眠ってしまったようで… 夕方、シルバが飛び込んでくるまで、気付かなかった。 賑やかに食卓を囲み、祖母の料理に舌鼓を打つ。 レシピもしっかりと教えてもらった。 帰ってからも二人に食べさせてあげれる。 和やかな時間…黒曜さんも微笑みが絶えない… 妹さんが帰幽してから今までシルバと二人で、慣れぬ育児と家事と、仕事をこなして、これからも一人で生きていこうとしていた恋人(ひと)。 俺がいるから。 これからは、ずっとあなたとシルバの側に。 俺だけじゃない、ここにいる俺の家族もみんな味方です… もう、あなたにあんな寂しい目はさせない。 俺の家族達は、黒曜さんとシルバをすっかり気に入ったようだ。 父と黒曜さんは酒を酌み交わしながら、いつの間にか二人っきりで何かヒソヒソと話し込んでいる。 舅と義理の息子の話し合い中!? …何の話かわからないけれど…邪魔しないようにしておこう。 シルバに至っては獣化することを気にすることもなく、平気でチビ狼になるまでにリラックスしていた。 今は祖母と母の膝の上を行ったり来たりと忙しい。 二人はそんなシルバを撫でながら、こちらも何か密談中。 残った俺と兄も、酒を飲みながら話をしていた。 「輝、お前仕事どうするんだ?このまま続けていくのか? もし…もし子供が本当にできたらどうすんの? 家事と育児、大変じゃないのか?」 兄に言われたことで、想像のものでしかなかったことが、急に現実味を帯びた。 「子供かぁ…そりゃあほしいよ。 さっき黒曜さんも、そう言ってたし。 俺が『産休』何てどうやって取ればいいんだろう…そうなったら今の仕事を続けるのは難しいよ…」

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