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二人の想い③
頃合いを見計らって、兄が黒曜さんを父から奪還してきた。
「ちょっと込み入ったプライベートな話になるけどいいかな?」
「はい、どうぞ。」
「さっき…子供の話が出ただろ?
産むのは輝だから…妊娠して身体が変わってきたら、いや、その前に悪阻だ!
会社も続けられるかどうかわからなくなる。
病院はちゃんと人狼関係の所があるから問題ないとして、その辺どう考えてるの?
輝を専業主夫にさせるのか、人狼関係の会社に移すのか、ちゃんとしておいた方が今後のためにいいと思って。
お節介だけど、ごめん。
でも、大事な弟なんだ。
嫁に出す以上は、ちゃんとできることは解決してから出してやりたいんだ。」
「兄さん…」
「今もお義父さんとその話をしてたんですよ。
なんにしても、一番負担が掛かるのは輝だから…
贅沢をしなければ、普通に暮らしていける分の蓄えはあります。
今まで以上にバリバリ書いて稼ぎますよ。
経済的なことは心配ありません。
だから、共働きということに関しては、する必要がないんです。
輝が家に入ってくれると、対外的ないろんなリスクは減りますが…俺は輝の望むようにしてやりたいんです。
輝はどうしたい?
専業で家に入ってくれるのか、仕事を続けたいのか。
今の会社では都合が悪いと思うから、転職は必至だと思うが。」
「うん…おれも今、兄さんに言われて、現実を見た と言うのか…何も考えてなかった…
『子供がほしい』って漠然と思ってただけなんだなって…
兄さんが言うように、俺の仕事は必然的に制限されるし、シルバの世話もある。
世間は人狼の存在を知らないから、表立ったことは憚られる。」
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