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二人の想い⑩

シルバもそうだが、俺にとっても昨日からいろんなことがあり過ぎた。 まさか両親と兄までもがやって来て、認めてくれたなんて。 喜びに高ぶる気持ちを落ち着かせようと、横になり目を瞑ると、睡魔に襲われてくる。 そこでプツッと意識が途絶えてしまった。 すーっと障子を開ける音がして、誰かが入ってきた。 髪の毛を撫でられて、逞しく温かなものに包まれた。 微かにアルコールの匂いがする。 「ん…黒曜さん?」 寝ぼける俺の額に唇に、キスが降ってくる。 「すまない、起こしたか?」 「いいえ、大丈夫です…もう解放されたんですか?」 黒曜さんはフッと笑うと 「お義父さん、ご機嫌でピッチが早くて…早々に酔ってしまわれて、お義母さんが回収していかれたよ。 輝が優しくてしっかりしてて強いのは、あのご両親譲りなんだな。」 「仕事が忙しくて放ったらかしでしたけどね。 でも、そのお陰で兄も俺も、家事が得意になったので感謝しなければ。」 くすくす笑って答えると 「本当だ。」 二人で声を殺して笑う。 黒曜さんは急に真面目な声で 「…これで葛西家の承諾を得ることができた… 輝、本当にありがとう…」 暗闇に浮かぶ青い瞳。 俺はそっと手を伸ばして黒曜さんの頬に触れた。 「俺こそ…本当にありがとうございます。 一生…手離さないで下さいね。 俺はもう、離れませんから…」 その手を握られ、手の甲にそっとキスされた。 「命を懸けて誓う…輝、愛しています。」 「…黒曜さん…」 シルバ越しの熱い抱擁とキス。 もどかしさが募るけれど、確かに伝わる愛。 その思いを胸に、愛おしい伴侶(ひと)に抱かれて眠りについた。

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