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ママの役割②
俺はシルバの頭を優しく撫でてやりながら
「そうだね。
黒曜さんにも…プロポーズしてもらったから…
俺にもその覚悟ができたし、家族にも認めてもらったし…
俺はシルバのママになるんだよ。
よろしくね、シルバ!」
「本当!?本当に!?
ママ…ママが本当のママになってくれるんだ…
僕の…ママに…」
シルバは、その大きな目を瞬かせると、ポロリと一筋、涙を流した。
「ママ…」
ジュニアシートから身を乗り出すように、俺にしがみ付く小さな身体。
ひぃっく…ひっく…ひぃっく…
しゃくり上げて、ぶるぶる身体を震わせて泣き出した。
俺はそっとシルバを抱きしめた。
小さな手が俺をしっかりと掴んでいる。
温かな…この手を離しはしない。
この子の本当のお母さん…白磁さんは、幼いシルバを残して逝くことが、どんなに心残りだっただろう。
そして、その思いを受けた黒曜さんは、たった一人でここまでシルバを育て上げた。
これからは、そこに俺も加わっていく。
俺達の二人の愛情で、シルバを育て上げるんだ。
視線を感じて、ふと前を見ると、バックミラー越しに黒曜さんがチラチラと心配そうに見ていた。
だ・い・じょ・う・ぶ
口パクでそう伝えると、黒曜さんは笑って頷いた。
しばらく泣き続けたシルバが、ようやく顔を上げた。
「ほら、シルバ…鼻かんで……そう、いい子。
涙も拭いて…」
目元を赤く染めたシルバが俺に微笑んだ。
「ママ、よろしくお願いします!」
俺もにっこりと微笑み返した。
「こちらこそよろしく!」
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