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ママの役割③

そうだ…ちゃんと挨拶しなければならない人がもう一人いた! 「黒曜さん!」 「どうした?輝…」 「あの…白磁さんの…シルバのママのお墓参りをしたいんです! 俺がシルバのママになるから、お願いしますって…ちゃんとご挨拶しなくちゃ。 連れて行ってもらえますか?」 「…いいのか?一時間程掛かるぞ?」 「はい、ぜひ!お願いします。」 黒曜さんは小さな声で「ありがとう」と言うと、ウインカーを右に出してUターンさせた。 途中で花屋に寄り、仏花と線香を買った。 それから車で一時間くらい走っただろうか。 あれ?見たことある… 見覚えのある道を通り、これまた見覚えのある門構えのお寺に到着した。 「黒曜さん…ここ…」 「あぁ。俺達みたいな人狼を祀ってくれるお寺だよ。 昨日、お義父さんに聞いたら同じだった。 輝の実家の菩提寺もここだろ?」 「…はい、おじいちゃんのお墓も、ここにあるんです…」 「うん、知ってるよ。 昨日、輝が昼寝している間に、お義父さんに連れて行ってもらったから。 俺だけ先に、おじいちゃんとご先祖様達にご挨拶させてもらったんだ。 置いて行ってごめん。 でも、あまりに気持ち良さそうに寝ているから起こすのがかわいそうで。」 「そうだったんだ…後でお参りして行くね。」 黒曜さんは頷くと、慣れた風に水桶に水を入れ、シルバの手を引いて歩き出した。 「ママに会いに行くぞ。」 シルバは神妙な顔をして手を取られ歩いて行く。 ここって、人狼のための菩提寺だったんだ。 ということは、ここのご住職も? 俺が知らないだけで、血の濃さは別として、人狼は俺の身近な所に大勢いるんだ。

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