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ママの役割⑤
それから、祖父のお墓にも行き線香を手向け、三人それぞれに報告した。
ご住職にも会って挨拶すると、ものすごく喜ばれた。
祖父の同級生なんだとか。
黒曜さんのこともよく知ってるらしく、バシバシ背中を叩かれて激励されていた。
シルバの頭を撫でて目線を合わせてしゃがみ込み
「しっかりと学んで、誇りを持って生きていくんだよ。
人狼には生きにくい世の中だが、君が大きくなる頃には変わっているやもしれん。
自分を守ってくれる人達がいることを忘れぬように。」
その言葉に、シルバはこくんと頷いた。
「利発な子よの。」
とご住職は笑った。
また顔を出します、と暇乞いをしてお寺を後にした。
車の振動が心地良いのか、シルバはぐっすりと眠ってしまった。
俺は一旦車を停めてもらい、助手席に移った。
「…黒曜さん…俺、責任重大です…」
「何の?」
「シルバを立派な大人にすることの。
本当に俺でいいんですか?」
「ふっ。何を今更。もう、離さないと言っただろう?
輝は、今までの輝のままでいてくれ。
明るくて優しくて強くて…時々凹む。
それもまた愛らしい。
銀波には、お前じゃないとダメなんだ。
もちろん、俺も。
俺には輝しか考えられない。
まさか、俺のことが嫌になったとでも?」
俺はぶんぶんと首を横に振った。
「いいえ!黒曜さんを思う気持ちは変わりません!
ただ自信がなくなったというか…生半可な気持ちではダメだと…」
「そんな気負う必要はない。
二人で育てるんだ。輝だけに負担はかけない。
輝は俺たちの側にいてくれればそれでいいんだ。
お前の存在そのものが俺達の生きる糧となり生きる術だから。」
「黒曜さん…」
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