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ママの役割⑦

そこから十五分ほど車を走らせ、周りが急に田舎の風景に変わった町へと入った。 何となく空気がのんびりとしている。 両サイド田んぼの道を進むと、よく宣伝に出てくる格安の子供服店の大きな看板とぶち当たった。 「…まさか、ここも?」 「あぁ、間違いないよ。教えてもらった通りだ。」 すぐにサイズの変わる子供服には惜しくない値段と品質の良さで、人気のある全国チェーンの店だった。 「なかなか目の付け所がいいな。 人狼ってのはなかなかビジネスに向いているのかな。」 黒曜さんが感心したように呟いた。 「ここで働く人たちって、みんな…」 「ほぼ100%の確率で、人狼もしくはその関係者だろう。」 「すごい…そうやってみんな支え合って人間社会に溶け込んでいるんだ…知らなかった。」 「そうだな。輝みたいに、人狼の血を引いてるなんて知らない人達も大勢いると思うよ。 …あと一社…これも全国チェーンの店だ。」 「どんな職種なの?」 「レストランだ。うまい肉をこれも格安で提供してる。 行列ついてるのを見たことがあるよ。 テレビで何度も取り上げられてるしな。」 「レストランか…」 「そこは夜行ってみようか。 昼は『帰って食べなさい』って、おばあさんがお弁当を作って持たせてくれたから、それを味わって食べたいんだ。 …銀波は外食したことがないんだよ。 そろそろ外の世界にも連れ出そうと思っていたんだけど… 輝がいてくれるなら大丈夫だと思う。 輝、どうかな?」 「はい!俺も行ってみたいです! シルバも喜ぶと思う。」 なんだかワクワクしてきた。

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