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シルバ、デビュー!⑤

早々に朝食を済ませ、準備を済ませたシルバが、耳をぴこぴこ尻尾をゆらゆら揺らせながら待っている。 「シルバ、まだ行く時間には早いよ。 後一時間はあるから…」 「わかってる、わかってるよ、ママ! …わかってるんだもん。」 うれしくて待ち遠しくて堪らないんだな。 ずっと耳と尻尾が揺れてる。 今までずっと黒曜さんと二人きりで、同世代の子供と触れ合うなんて、そんな機会もなかったから。 普通の保育園や幼稚園では絶対に無理だから。 流石に仕事柄、母の情報は的確で詳しくて、おまけに人狼絡みのことだから、黒曜さんが知らない施設も数多くあったのだ。 そこがダメなら…あと何件か候補があるって言ってたから、行ってみよう。 今から行く所が、どうかシルバに合う所でありますように。 お友達が沢山できますように。 そうこうしているうちに、出発の時間になった。 黒曜さんがスーツに着替えている! カッコいい… 頬を染めボーッと見惚れていると 「輝?どうした?…変かな…」 慌てて首を振った。 「ちっ、違うんです!余りにカッコよ過ぎて…見惚れちゃいました。」 素直にそう言うと、頭を掻きながら 「輝にそう言われると…照れるじゃないか。 銀波、お待たせ!さあ、行こうか。」 「うん!!」 「輝?どうした?早く行くよ。」 「俺…一緒に行ってもいいのかな…だって、俺はまだ」 「輝は俺達の家族だ。誰にも文句は言わせない。 それに 人狼関係のカップルは同性も多いから、不思議には思わないよ。 遠慮しないで…っていうか、遠慮してほしくない。」 「…はい、わかりました。」 「ママぁ、早く早く!」 シルバに引っ張られて俺も急いで家を出た。

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