142 / 337
シルバ、デビュー!⑤
早々に朝食を済ませ、準備を済ませたシルバが、耳をぴこぴこ尻尾をゆらゆら揺らせながら待っている。
「シルバ、まだ行く時間には早いよ。
後一時間はあるから…」
「わかってる、わかってるよ、ママ!
…わかってるんだもん。」
うれしくて待ち遠しくて堪らないんだな。
ずっと耳と尻尾が揺れてる。
今までずっと黒曜さんと二人きりで、同世代の子供と触れ合うなんて、そんな機会もなかったから。
普通の保育園や幼稚園では絶対に無理だから。
流石に仕事柄、母の情報は的確で詳しくて、おまけに人狼絡みのことだから、黒曜さんが知らない施設も数多くあったのだ。
そこがダメなら…あと何件か候補があるって言ってたから、行ってみよう。
今から行く所が、どうかシルバに合う所でありますように。
お友達が沢山できますように。
そうこうしているうちに、出発の時間になった。
黒曜さんがスーツに着替えている!
カッコいい…
頬を染めボーッと見惚れていると
「輝?どうした?…変かな…」
慌てて首を振った。
「ちっ、違うんです!余りにカッコよ過ぎて…見惚れちゃいました。」
素直にそう言うと、頭を掻きながら
「輝にそう言われると…照れるじゃないか。
銀波、お待たせ!さあ、行こうか。」
「うん!!」
「輝?どうした?早く行くよ。」
「俺…一緒に行ってもいいのかな…だって、俺はまだ」
「輝は俺達の家族だ。誰にも文句は言わせない。
それに
人狼関係のカップルは同性も多いから、不思議には思わないよ。
遠慮しないで…っていうか、遠慮してほしくない。」
「…はい、わかりました。」
「ママぁ、早く早く!」
シルバに引っ張られて俺も急いで家を出た。
ともだちにシェアしよう!