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シルバ、デビュー!⑨

俺達は真剣に聞き入っていた。 「秘密裏に国にも認めてもらわねばならないですからね、当然、公の機関…役所や学校、警察、様々な所へ人間として入り込んでいきました。 発言権も必要ですから、議員になるものも出てきました。 そうして、粛々と人間の世界に入り込んでいるんです。 ですから…今まで緊急事態が起こったことはありません。 水際で全て食い止めることができるようになってますから。 銀波ちゃんを通わせてみてはいかがでしょう? ご覧になった通り、まだ人型を取れない子達も大勢います。 保育者も、殆どが人狼の血を引くものです。 中には純粋な“人間”の方もいらっしゃいますが… 同年代の子供達との触れ合いで…仲良くなったり喧嘩をしたり、協調性や社会性を学んでいきます。 小学校に入る準備も必要です。 まず銀波ちゃんの気持ちを聞いて『行ってみたい』と思われたら、しばらく『慣らし保育』として通って、ご両親共々ご納得されたら正式な入園…となさってみたら? お子さんの気持ちが一番ですから。」 ホッとした。 安全面も大丈夫そうだ。 あそこにいた子供達も、シルバみたいにまだ上手に変化できない…らしいし、似たような子達なら、すぐに仲良くなれるかも。 ずっとうちで、一人ぼっちで過ごして、友達との付き合いもできぬまま、小学校へは行かせられない。 苦労するのはシルバだ。 黒曜さんが俺に尋ねた。 「俺は園長先生のおっしゃる通りにしたいけど、輝はどうだ?」 「俺もそうしたいです。 送り迎えは出来るだけ黒曜さんの負担にならないように、俺がしますから。」 「それは問題ないよ。 では園長先生、銀波の答えを聞いてお返事させていただいてよろしいでしょうか?」 「ええ、もちろんです。」

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