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小さな恋の始まり①

side:輝 園長先生から館内を案内されて、 また応接室へ戻ってきた。 「お天気のいい日には園庭で遊びます。 泥だらけになる日もありますけど…お洗濯が増えますが、ごめんなさいね。 こちらが…園の年間行事です。 今月の運動会は終わってしまったんですが… 来月だと…親子遠足もあるんですよ。」 アルバムも見せてもらった。 本当に、普通の保育園と全く変わらない。 違うのは、ここに通う子供達が人狼だということだけ。 「先生、あと一つだけいいですか?」 黒曜さんが切り出した。 「はい、どうぞ。」 「地上の警備は万全ですが、グー◯ルアースとか、ドローンとか、空からのそういった映像に映ったりはしないんですか? 噂ですが… 獣化する人狼の子供の誘拐事件が起こっていると聞きました。 単なる噂だけならいいのですが、そんな話が出るということは、何か事件に巻き込まれる心配があるので… 取り越し苦労ならいいのですが。」 園長先生は急に真顔になって 「おっしゃる通りです。 その点は、各国との内約によって安全が約束されています。 それに、ここの村では独自にドローンを飛ばして巡回をしていますから。 誘拐事件については…私も耳にしたことがあります。 が、真偽のほどはわかりません。 いずれにせよ、人狼に限らず、全ての子供達も同じ危険に晒されている訳ですから、保護者と協力して、ご覧頂いた通り防犯対策はしっかりと行っています。」 「わかりました。 …各国…ということは、世界中に人狼がいるということですか?」 「ええ。ヨーロッパを中心に。 現地の方もそうですが、日本から優秀な人材が海外に移住して…というケースもありますから、全世界と言っても過言ではないですね。 今では、純粋な人間の方が少ないのではないかしら。」

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