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小さな恋の始まり⑤
ゆみ先生が、太陽君に優しく話しかけていた。
太陽君に家族がいるように、シルバにもちゃんと帰るお家があること。
保育園で一緒に遊んだり学んだりできること。
お休みの日にも遊べたらいいね、とも。
それを聞いていた太陽君が、静かに泣いていた。
子供なりに一所懸命納得しようとしているようだった。
けれど、感情が追いついていかないのだろう。
突然、シルバが太陽君の頬の涙をペロリと舐め取った。
驚く太陽君に、シルバが言った。
「明日!明日、また遊んでね!」
「…絶対に来いよ。」
と太陽君はそう言って、鼻先をぐりぐり擦り付けてきた。
クスクス笑う二人を見ていた他の子達が『結婚したみたいだ』と囃し立て大騒ぎになっている。
そこへゆみ先生の大声が…
ピタリと静かになった教室で、サヨナラの握手をしてくれた ゆみ先生に見送られ、俺はシルバと手を繋いだ。
廊下へ出ると、太陽君が扉のところまで追ってくる。
「シルバっ!明日な!絶対だぞっ!」
目に涙を一杯溜めた太陽君が手を振り、今日はそれでお別れとなった。
先生方と園長先生に見学のお礼と明日からのお願いをして…黒曜さんは太陽君のお家への連絡も再度頼んでいた。
こうして、思いがけない波乱の見学は終わった…
車に乗ってからも、何度も何度も後ろを振り返るシルバに
「お友達、たくさんできてよかったね、シルバ。
明日も会えるから。みんなと一杯遊べるよ!」
と声を掛けると
「…うん。」
と言ったっきり、黙ってしまった。
…輝…と黒曜さんに小さな声で呼ばれて振り返ると、優しい目で俺を見ながら、数度首を横に振った。
“そっとしておけ”ということか…
俺はシルバにそれ以上声を掛けるのを止めて、身体を前に戻した。
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