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小さな恋の始まり⑧
もう一度、ゆっくりと伝える。
「太陽君のご両親が挨拶に来られるんだ。
人型に戻れる?」
目を瞬かせ、きゅん!と鳴いたシルバは、見る間に人型になった。
「お父さんとお母さん?どうして?
僕、悪いことしたの?」
涙目のシルバを抱き寄せて、頭を撫でてやる。
「違うよ。太陽君とシルバは番なんだって。
大きくなったら結婚するんだよ。
だから、仲良くして下さい ってご挨拶に来て下さるんだ。」
「僕と太陽君が『番』?黒曜と輝みたいに?」
「うん、そうだよ。」
「そうなんだ…僕…太陽君と…」
「さあ、着替えて準備しなきゃ。シルバも手伝ってね!」
「はいっ!」
ご両親と太陽君と…三人かな?
俺はコーヒーメーカーに豆をセットして、カップとソーサーを並べた。
それと…ジュース用のコップを二個。
モップで床を拭き、玄関の三和土 を雑巾でザッと拭き上げ、スリッパを並べておく。
そして目に付くところの埃をハンディモップで払っていく。
シルバは、保育園で借りた服を脱ぎ、お気に入りの服に着替えていた。
「ママぁ、僕、何をしたらいい?」
「新聞と雑誌、片付けてくれる?」
「はいっ!」
トイレをさっと洗い流し、タオルを交換する。
洗面所も拭き上げて、ここのタオルも交換した。
これでいいかな?
「ただいまー」
黒曜さんが帰ってきた。
「輝、これでいいかな?」
手渡されたのは、いろんな種類の焼き菓子とクッキー。
「ケーキだとご飯が入らなくなるからね。」
「美味しそう!ありがとうございます。」
笑って受け取ると、黒曜さんがホッとした顔をした。
「もうそろそろ来る頃か…」
コーヒーメーカーのスイッチを入れた。
途端に部屋一杯にコーヒーに良い香りがしてくる。
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