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許婚①
程なくしてチャイムが鳴った。
「はい!」
「初めまして、小橋です。突然に申し訳ありません。」
「いいえこちらこそ。どうぞお入り下さい。」
セキュリティロックを外し、到着を待つ。
そわそわと落ち着かない黒曜さんは、玄関のドアを開けて待っている。
玄関先で声が聞こえてきた。
「こんにちは。本当にせっかちで申し訳ない。
小橋哲也です。こちらは家内の充 」
「初めまして。突然にごめんなさい。」
「いいえ、とんでもない。こちらこそ。
ここでは何ですから、さあ、中へどうぞ。
あ!太陽君、シルバ待ってるよ!」
「はいっ!よろしくお願いしますっ!」
ガヤガヤバタバタと、賑やかな音が聞こえてくる。
「こちらは私の婚約者の葛西 輝です。
最近一緒に暮らし始めたんです。」
「こんにちは。わざわざお越しいただいて申し訳ありません。」
「とんでもない!押し掛けて申し訳ありません。
あ…銀波ちゃん?
太陽のお父さんとお母さんです。
どうぞよろしくね。」
俺の足元に身体を隠し、顔を出していたシルバを見つけて挨拶してくれた。
「…こんにちは。銀波です。
よろしくお願いします。」
小さな声で、でもしっかりと挨拶するシルバに、太陽君のお父さんは
「はぁ、こりゃあ太陽には勿体無いくらいの、賢いベッピンさんじゃないか!
よかったな、太陽!」
あっはっはっ と大笑いしている。
体躯のいい、日に焼けた顔はくしゃりと崩れて、隣の充さん に突っつかれている。
スラリとスレンダーで細面のこの美人は男性?
「こちらへどうぞ。」
急いでコーヒーを準備していく。
太陽君とシルバは尻尾をふりふり、もう手を繋いでいた。
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