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許婚③

小橋さんが慌てて言った。 「あぁ、そんな!どうか、頭を上げて下さい! こちらがお願いしなければならないのに。 ではお許しいただけた…銀波君を嫁として迎えることができる…と受け取ってよろしいでしょうか?」 「ええ、もちろんです!」 「うちはあの村一帯の田畑を管理しています。 村の外…人間社会にも、農産物を卸しています。 米、野菜、加工品…収入はそこそこあるので、生活面で苦労することはありません。 しかし、やりたい仕事も出てくるでしょうし、無理に農家を手伝わなくてもいいんです。 従業員も大勢いますし、現に、うちの充は偶に手伝う程度で、本職の仕事をやってますから。 な、充?」 「ええ。これが私の仕事なんです。」 差し出された名刺には、市内の会計事務所の住所と、所長の肩書きがあった。 「近頃は、農家に嫁ぐのが嫌だと敬遠されることが多いようですね… 私もワガママを言って、好きなことをさせてもらってますよ。」 充さんが微笑んだ。 ふとシルバ達を見ると、さっきまで伏せられていた耳と、丸まっていた尻尾が緩み、耳はピンと立ち、尻尾は絡まり合ってゆらゆらとうれし気に揺れていた。 と、太陽君が 「俺、大きくなったら銀波と結婚できるの? パパやママみたいに、ずっと一緒にいられるの?」」 「あぁ、今 承諾いただいたから、大きくなったら…結婚式だな。」 太陽君は、うれしそうに、何やらシルバの耳元でささやいた。 シルバもそれに答えて真っ赤になりながら、くすくす笑っている。 それから小橋夫夫といろんな話をした。 空もとっぷりと暮れて、街灯がちらほらと点き始める頃に、三人は帰って行った。 別れを惜しんで離れたがらない二人に 「明日からまた会えるし、お休みの日にも会えるから。」 と納得させて、“また明日”の握手とハグが加わった。

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