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許婚⑥
大騒ぎの中お腹一杯食べて家に着いて、ハイテンションのシルバと風呂に入り、着替えさせると、まるで電池が切れたおもちゃのように、シルバはことりと寝てしまった。
見る間にチビ狼になったシルバを抱えてベッドに連れて行く。
「今日は本当にびっくりすることだらけだったね。」
頭を撫でながら「お休み」と声を掛けてリビングに戻ると、風呂上がりの黒曜さんがグラスを持ってきた。
「輝、少し付き合ってくれないか?」
タオルを首に掛け、逞しい裸の上半身を晒した黒曜さんにドギマギしながら、頷いて隣に座った。
グラスに赤いワインが注がれる。
カチリとグラスを合わせ、ひと口飲んだ。
「今日も振り回してしまったな…すまなかった。
でも、輝がいてくれたから…冷静でいられたんだ。ありがとう。」
「本当にびっくりしましたね。
シルバが幸せになるなら…受け入れるしかないのかな…
俺も、黒曜さんがいてくれたから…」
「承諾してよかったんだろうか。
あの子はまだ、五才だというのに。
番だとはいえ、正直、まだ迷ってるんだ。」
黒曜さんはグラスのワインを飲み干して、テーブルにコトリと置いた。
「幼いが故に…これからの長い人生を決める権利が俺にあるのだろうか…」
俺はそっと黒曜さんの手に触れた。
「俺は…幼くても、あの子達の絆の深さを感じました。
何よりも、惹かれあってお互いのことが大好きで…
それに、ご両親も懐が深くて、シルバを受け入れてくれそうでした。」
「…そうだな…
明日にでも、輝のお父さんに話を聞いてもらいたいんだが、いいかな?」
「もちろんです!何時頃なら空くか、ラ◯ン入れときますね。」
「ありがとう…」
俺が連絡を入れると、20時過ぎなら大丈夫だ、とすぐに返信があった。
「20時過ぎなら大丈夫だそうです。」
「ありがとう。ところで…輝を感じたいんだが、いいか?」
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