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許婚⑦
俺は頬を染めながら答えた。
「…悪い訳、ないじゃないですか…」
ほんのひと口のアルコールで火照った肌が、更に熱くなる。
破顔した黒曜さんに抱かれて、その首に腕を回して身体を預ける。
いつか…あの子が大人になって、心から愛する人と結ばれる時、こんな穏やかで切ない気持ちになるのだろうかと、ぼんやりと考える。
番って、身も心も蕩けてしまいそうなくらいの繋がりなんだと、改めて思っていた。
そんな相手とこんな小さな時に出会えるのは、それもまた幸せなのかと。
ふわりと身体が浮いて、軽々と寝室へ運ばれていく。
壊れ物を扱うように、そっとベッドに下され、何だか面映ゆい。
女性ではないのに、こんなに優しくされたらどうしていいのかわからなくなる。
黒曜さんは、俺に跨り頭を撫でると、ゆっくりと覆い被さってきた。
雄の匂いに包まれる。
その濃厚な匂いに、頭がクラクラしてくる。
抱きしめてくる身体に手を伸ばして、背中に回す。
両手で感じる逞しい躯体に、うっとりと目を瞑った。
俺の首や耳の後ろの匂いを舐め嗅ぎながら、器用に服を脱がす番。
あっという間に素っ裸にされ、薄っぺらい身体を隠そうとするのに、邪魔をされた。
「…隠さないで…輝を全部見せて…」
甘いささやき声に、魔法にかかったように従順に力を抜いて応える。
引きちぎらんばかりに自分のスーツを脱ぎ捨てた黒曜さんに抱きしめられる。
熱い…
触れる肌が、当たる吐息が
青い瞳の視線が…
「輝、俺の番…愛してる…愛してる…」
繰り返される愛の呪文に囚われて、くねる身体は黒曜さんに纏わり付く。
そして今夜も…
たっぷりと愛を注がれて朧げに覚えているのは、情欲に満ちた青い瞳と、『愛してる』という言葉…
俺は幸せな気分に満ち足りて意識を手放した。
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