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てんやわんや①
取り敢えずすぐに、中澤課長に有休のお礼とお詫びをしにデスクへ向かった。
「課長、お忙しい時に申し訳ありませんでした。
有休ありがとうございました。
あの…これは課長に個人的なお土産です。
みんなには別に用意してますから…。」
「おっ、葛西!やっぱりお前は気が利くな。
ありがとう。遠慮なく。
少しはのんびりできたのか?
おばあさんは元気だったのか?」
チャンス!今言うしかない!
「あ…実はそのことでご相談が。」
「ん?…じゃあ、ちょっと、こっちに来い。」
連れていかれたのは会議室。
椅子に掛けるように言われ、対座した。
「で?どうした?何か込み入った話か?」
「はい。実は…」
俺は考えた通りのストーリー…祖母の具合が思った以上に悪く、最後まで面倒を見たいという家族会議の結果、家族の中で俺が一番動きやすいのと、向こうで就職も何とかなりそうなこと…を申し訳なさそうに話し、一カ月後の退職を前提に引き継ぎを済ませたい、と申し出た。
課長は黙って聞いていたが、一言
「葛西…お前が抜けるのは正直痛いな…」
とがっくりと肩を落として言った。
「まぁ…そういう家庭の事情なら、仕方ないのかもしれないが…何とかならないのか?
…そういうのは普通女性が主になって面倒を看るものじゃないのか?
お前のお母さんがやればいいんじゃないのか?」
「…課長…今時そんなことを言おうもんなら、世の中の女性から総スカン食らいますよ!
あの…余計なお世話かもしれませんが、課長の奥さんにそんなことを言ったら、即離婚ですよ。
気を付けてくださいね!
それに、うちの母は、家事一般が苦手で、特に料理は全くなんです!
そんな母がいても、役に立たないんです!」
…母さん、ごめん…
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